「喫茶史上最高のカレー」。
バッキーさんが、そう讃えてやまない「喫茶 茶の間」にやってきた。
店内は、時代が染みた壁やテーブル、タイル風床、使い込まれたソファ風の小さな椅子、シャンデリア風天井照明1など、昭和の匂いがする空間が広がっていた。
創業は昭和41年だから、59年目を迎えるのだな。
座るなり「ビーフカレーセットをください。生卵のせで」と、お願いした。
「辛さはどうしますか?」と、聞かれたので、「ちょい辛でお願いします」と、返す。
時間をおくことなく「ビーフカレー」が運ばれた。
これは、昭和カレーではない。
まず、ライスに最初からカレーがかけられていない。
ソースボットにカレーが入れられ、色は焦茶に近く、ルーはサラサラである。
喫茶店カレーの常套句は微塵もない。
「ルー足りなかったら言うてください」。そう言っておばちゃんは、置いていった。
さあ食べよう。
おお、ちょい辛なのに、結構辛いゾ。
おそらく普通でも辛いのだろう。
口の中でスパイスの香りが弾け、鼻に抜けていく。
それがなんとも痛快で、インド料理店に来たのかと思わせる。
香りの中で、甘み、微かな酸味、うまみが丸く溶け込んでいる。
だが昭和カレーではないので、ちょいと生卵は合わなかったか。
またちょい辛ではなく、普通の方がバランス良かったかな。
具は、玉ねぎと牛肉が2切れと少ないが、旨みが深いので、スプーン持つ手が止まらない。
このカレーは、初代店主が創業当時にアルバイトで働いていた、スリランカ人に教わったそうである。
インド料理もスリランカ料理店もなかった当時、食べた人は衝撃だったろう。
最初は面食らっただろうが、次第に虜にさせる味である。
半世紀以上受け継がれてきた、スリランカの茶の間の味わいに痺れる。
「辛さ大丈夫でしたか?」
帰り際、おばちゃんがにこやかに尋ねた。
「はい。おいしくいただきました」。
「ありがとう」。
今度は普通をお願いしよう。
京都「喫茶茶の間」にて